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東京地方裁判所 昭和47年(タ)475号 判決 1973年5月23日

主文

原告および亡清野謙次と被告両名との間で昭和一五年三月一九日届出られた養子縁組はこれを取り消す。

訴訟費用は被告らの負担とする。

事実

原告訴訟代理人は主文第一項と同旨の判決を求め、請求の原因として次のとおり述べ、甲第一ないし第四号証を提出した。

原告(明治二八年六月一日生)はその夫である亡清野謙次(明治一八年八月一四日生、昭和三〇年一二月二七日死亡)とともに、昭和一五年三月一九日、被告清野博(明治二四年一〇月一二日生)およびその妻である被告清野光子(明治三三年四月一日生)を養子とする縁組の届出(当時の原告らの本籍は京都市左京区田中関田町二二番地)をした。しかし、右の養子縁組は養子である被告清野博が養親である原告より年長であるから、民法第七九三条に違反し、取り消しうべきものである。よつてその取り消しを請求する。

被告ら訴訟代理人は「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、答弁として次のとおり述べ、甲号各証の成立を認めた。

原告の主張事実はすべて認めるが、縁組取消原因の存することはこれを争う。仮に取消原因ありとしても、その取消権は既に時効により消滅しているし、亡清野謙次と被告らとの関係は過去の法律関係であつて原告にはこれを争う利益がない。

理由

公文書として真正に成立したものと認められる甲第一ないし第四号証および本件弁論の全趣旨によれば、原告の主張事実がすべて認められ、この認定の妨げとなる証拠はない。右の事実によれば、本件養子縁組については、養親の一方である原告が養子の一方である被告清野博よりも年少であることが明らかである。このように夫婦が他の夫婦と縁組をする場合にあつては、その縁組はこれを一体としてとらえ、その一人について民法第七九三条に違反する点があれば、縁組の全体を同法第八〇五条により取り消すことができる、と解するのが相当である。被告らは右の取消権は時効により消滅した旨を主張するけれども、この取消権が消滅時効にかかることを認めるべき何の根拠もないから、右の主張は援用することができない。また、被告らは、亡清野謙次と被告らとの法律関係は過去の法律関係であるというけれども、本件養子関係は一体として現在の法律関係と見るべきこと前示のとおりであるのみならず、人事訴訟手続法の規定により、養子縁組の無効取消請求訴訟において当事者となるべきものの一方もしくは一部が死亡した場合にも訴訟を追行しうるのであるから、被告らの右の主張も理由がない。よつて、原告の本訴請求を認容し、民事訴訟法第九五条、第八九条、第九三条を適用して主文のとおり判決する。

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